Masuk作者「はいどうもー!作者の部屋へようこそ!」りお「こんにちは」瑛「……早めに終わらせろ」作者「瑛、冷たい。作者泣いちゃう。もっと怖い展開書いちゃうかもー?」瑛「やめろ。俺の胃がもたない」作者「じゃあその所長低音やめようよ」瑛「俺が高音だったらキャラ崩れるだろ」作者「確かに」りお「瑛の高音……それはそれで聞いてみたいかも」作者「だってよ、瑛」瑛「却下」作者「さて、刺身の件ですが」りお「結構前の話持ってきたね」作者「現在刺身エピ真っ最中の読者さんには美味しいかもね。さあ瑛。刺身が食べたいって延々とりおに言ってたんだって?」瑛「そんなには言ってない」りお「言ってたよ」作者「一回刺身の口になったらどうしても刺身なん?」瑛「……刺身は美味しいだろ」作者「氷の氷室が……ずっと”刺身が食べたい”は草でしょ」瑛「お前が言わせたんだろうが。いくら出先の通り道に大阪屋があったからって」りお「作者、そうなの?」作者「何も聞こえなーい!」瑛「そもそもな。俺は北陸直送の刺身が食べたかったんだよ。それをサーモンに変えたのは完全に作者都合だろ」作者「へ?(目、ぱちぱち)」りお「そうなの?」作者「え、えっと……いやね、ちゃんと北陸直送の刺身を食べるエピのはずだったんよ。でも、ついつい……」りお「何が?」作者「いや、実際に行った大阪屋で売ってたサーモンが美味しそうで」瑛「ほらな」りお「えっ!そうなの?」作者「いいじゃんサーモン美味しいし」瑛「雑過ぎだろ設定が」りお「でも瑛、美味しそうに食べてたよ?」瑛「……(目を逸らす)」
──顔が勝手に笑顔になる。──目が勝手に細くなる。これがいわゆる、オタク顔というものだろうか。瑛には絶対見せられない。ドン引かれるくらいなら、いい。苦笑いされるくらいなら、まだいい。厄介なのは、この私の姿を見て、瑛がしゅんとすることだ。数量限定の、このアクスタ。観賞用と保管用、2つ購入するのはファンの常識。推しが表紙を飾る、この雑誌。こちらも2冊購入。理由は言わずもがな。そして、この!公式ペンライト。ライブで振る正式サイズのものと、ひとまわり小さいキーホルダー。もちろん、どちらも公式。BTSの場合は、これをアミボムって呼ぶ。……じゃなくて!今この瞬間の議題。このアミボムキーホルダーを、いかに自然な形で私の鞄につけるべきか。少しずつ、瑛の視界に馴染ませていくべきか。それとも堂々とつけるべきか。あ!でも!そもそも瑛はアミボムの存在、知らないはず。私が鞄にある日突然アミボムキーホルダーをつけたところで、それがアミボムだってきっと瑛は気付かない。うん!堂々とつけよう!「……それ、何?」もうつっこまれたーーー!即日つっこまれるって何?折角通常モードの顔を保っていたというのに。瑛、私がARMYなの知ってるなら空気読んで黙ってようよ。……ってそれは、私の勝手か。瑛にとっては理不尽なのかもしれない。「……ん?これ?キーホルダー」「キーホルダーなのは見ればわかる。何のキーホルダーだ」はい、氷の氷室、出ました。もうすぐ妻になるこの私に、氷の氷室。乱用禁止規定、作った方がいいかもしれない。さて、このアミボ
──side.莉子私が氷室の鎧の中身を知っているのは、社内が長いからじゃない。大学の研究室。不動産と都市データを扱う、地味で堅いゼミだった。氷室は、当時から言葉が少なかった。少ないけど、結論が速い。論点の整理が正確で、常に冷静であろうとした。ある日、研究発表の直前。指導教官が言った。「氷室、前提が抜けてる。江崎、どう思う」私は即答した。「前提が抜けてるんじゃなくて、中身を“書き換えてる”んです。氷室は焦ると前提を報告書に変えてしまいます」教室が笑った。氷室だけが笑わない。「……違う」氷室は静かに否定した。私は一歩も引かなかった。「違わない。今だって、“緊張してる”って言えばいいのに。言わないでしょ」沈黙。氷室が、そこで初めて、ほんの僅かに目を伏せた。それが──負けだ。研究室の誰も気づかなかった。でも私は気づいた。氷室は、感情を見せないために整える。元から冷静なんじゃない。自分が冷静であると見せたくて、動揺を見せたくない人。だから、あの婚約破談の時も。噂じゃなく“事実”として、私の耳に入った。研究室仲間って、そういう距離だ。踏み込まないくせに、知ってしまう。そして今日。氷室の中身が鎧から見えちゃってる。……あの男が、また誰かを守ろうとして、今度は自分が落ちるやつだ。私は、研究室の時から知っている。“守る”は、氷室の地雷なんだなあ。──side.莉子私、江崎莉子は、朝のフロアの空気の“密度”がいつもと違うことに気づくのが早い。この道長いもの。ふっふ
テーブルに並べる。 形の悪いおにぎり。 焦げた目玉焼き。 しじみ汁。 朝比奈は、じっと見てから笑った。 「氷室所長、料理します?」 「最低限だ」 「好物は?」 少し考えてから、答える。 「……焼肉だ」 なぜか、朝比奈が笑った。 食事は静かに終わった。 車で送る。 助手席で、朝比奈は窓の外を見ていた。 「昨日……迷惑かけましたよね」 「記憶はあるのか」 「途中から曖昧です」 それでいい。 むしろ、その方がいい。 信号待ちの赤。 ハンドルを握る手に、無意識に力が入る。 似ている。 危うさが。 距離感が。 だからこそ、線を引く。 自宅の前で車を停める。 「今日は休め。土曜だろう」 「……はい」 ドアを開けて降りる前、朝比奈が小さく頭を下げた。 「ありがとうございました」 それに対して、俺はただ頷くだけにした。 それ以上は、何も言わない。 エンジンを切ったあと、しばらく動かなかった。 監視。 救出。 保護。 そして、非介入。 矛盾しているのは分かっている。 だが── 二度と、同じ失敗はしない。
──太郎さん。 店の暖簾をくぐった瞬間、いつもの匂いがした。 焼き鳥と炭と、日本酒。 仕事帰りの連中の声が重なって、天井の低い空気が少しだけ濁る。 行きつけ。 職場の人間がよく使う場所。 だからこそ、油断も生まれる。 俺は席に着いたあと、自然と全体の配置を見た。 出口、通路、個室の位置。 癖だ。昔から変わらない。 視線の先。 朝比奈が、榊と向かい合っていた。 利き日本酒大会。 そんなことを言って、二人で小さなグラスを並べている。 「これ絶対こっちが純米だって〜」 朝比奈は笑っている。 顔色はもう、少し赤い。 飲み方が、危うい。 量の問題じゃない。 ペースだ。 楽しさに引っ張られて、境界が曖昧になっていくタイプの飲み方。 榊は、距離が近い。 笑うたびに、身体を乗り出す。 言葉の間に、触れようとする気配が混じる。 ……ああ。 胸の奥で、古い記憶が薄く軋んだ。 同じだった。 あのときも。 楽しそうに笑って、 距離の近い男に、 悪意なく隙を見せる女。 「朝比奈、それ三つ目じゃないか?」 軽く声を投げる。 止めるでも、叱るでもない。 ただの確認の形で。 「えー?まだ二つですよー、たぶん!」 たぶん。 危うい。
瑛が、何事もなかったように高砂へ戻ってくる。息を乱している。少しだけ。本当に少しだけ。うっすらとした汗。それがまた、どうしようもなく色っぽかった。「瑛……」すごかった、とか。聞いてない、とか。いつ練習したの、とか。言いたいことはたくさんあるはずなのに、声にならない。瑛は私の隣に戻ると、何食わぬ顔で席についた。そして、私にだけ聞こえる距離まで顔を寄せる。「これで満足か」耳元に落とされた、吐息混じりの低い声に、全身から力が抜けた。満足?そんな言葉で足りるわけがない。私は今、披露宴会場で生涯を一回終えた。「……瑛」ようやく名前を呼ぶと、瑛は涼しい顔でグラスを手に取った。「まだ手紙が残ってる。泣くなら取っておけ」無理です。もう泣きそうです。もう笑いそうです。もう好きです。もう息できません。色々無理です。ポカリをください。何度目か分からない恋に、また落ちた。これから一生、何度でも。瑛に恋に落とされるのだろう。妻なのに。夫なのに。夫婦で恋人。この人となら、きっと、いられる。会場の照明が、少しずつ元の色に戻っていく。司会者が、次の進行を告げる声が聞こえた。両親への手紙。大丈夫。読める。読めるはず。たぶん。隣で瑛が、何もなかったみたいに私の水のグラスをこちらへ寄せた。ずるい。もう所長の顔に戻っている。その指先を見ただけで、さっきの動きが頭の中に蘇る。だめだ。やっぱり無理かもしれない。ねえ、瑛